腰痛について
2000.8.29
岐阜県 可児市
吉村 健治
1・ 腰痛はなぜ起きるのか?
それは人間の進化にあります。腰痛は二本足で立っている人間の宿命なのです。もともと四本足で歩いていた人間は進化して二本足で立つようになり、背骨は垂直に配列し垂直方向に多くのストレスがかかるようになったのです。特に腰は上半身の重みを支えながら活動しなければなりません。そのため更に多くの負担がかかるようになりました。
このように腰には通常でも大きな負担がかかっています。それに増して重い荷物を持ったり、激しいスポーツをしたりすると、腰には思いがけない大きな負担がかかってきます。腰痛はその負荷に耐え切れなくなった時に起こるのです。
2・日常生活が腰痛をつくる
顔を洗う、椅子に座る、立って作業をする。私達はこのような日常の動作を日頃気にもかけずに行っていますが、腰を痛めてみるとどんなに強いストレスを腰に与えているのかを知る事ができます。
約20年前に椎間板という脊椎のクッションにあたる部分の圧力(椎間板内圧)を測定した整形外科医がいます。仮に体重を100とすると、椅子に座ったり立位でやや前かがみになった時、圧力は約250にもなり体重の2.5倍の圧力がかかることになり、20kgの荷物を持った立位では圧力は300にもなってしまいます。
つまり座ったり前かがみになったりという日頃のさりげない動作は、椎間板をはじめとする腰椎にかなりの負担を強いていることになります。このような脊椎のストレスがその老化を徐々に進めていき、やがて腰痛という症状を出してきます。
3・腰の仕組みを知ろう
腰の骨は一般に五つの腰椎からできています。しかし五人に一人は五つではなく、四つとか六つの腰椎からできており、これを移行椎と呼んでいますが奇形ではありません。この移行椎のすぐ上の椎間板はストレスを受けやすく変化がでやすいようです。椎体の後のある空洞の部分を椎孔といいます。この椎孔は上下に長い管になります。この管を脊柱管といいます。脊柱管の中には硬膜に包まれた脊髄があり、脊髄から出た脊髄神経が椎間孔から脊柱管の外に出ています。
また、硬膜の中は脳脊髄液と呼ばれる透明な液体で満たされており、脊髄を保護する役目を果たしています。椎間板は背骨にかかる衝撃を吸収して、和らげるクッションの働きをしています。椎間板は中央部の髄核と、それを取り囲む輪状の線維輪とでできています。正常な髄核は水分が非常に豊富な組織です。上下の椎体は複雑に走行する線維群によって連結されています。さらにその外側を強力な靭帯で補強されていますが、後方は前方ほど強くはありません。後方は椎間板のウィークポイントといえます。
筋肉は背骨を支える非常に重要な役目を果たしています。背骨を安定させるためには、体を前に曲げる腹筋と後にそらす背筋とのバランスがよく保たれていなければなりません。特に腹筋は横隔腹と共に腹圧を確保して、背骨を支える役目をしています。また、仙骨が骨盤の一部をなしているので、骨盤の筋肉も姿勢を調整するのに大きく関係しています。
4・腰痛はどのように進行するのか
多くの腰痛は背骨とその周囲の筋肉や靭帯などを支配している神経のどこかに刺激が加わる事によって発生します。すなわち背骨や筋肉、靭帯に許容量を越える負荷がかかって、それらが破綻をきたすようになるとそれに伴って神経が炎症をおこし、痛みを感じるようになります。
椎間板が痛む原因には、外傷や感染などがあげられますが、腰痛のほとんどは加齢に伴って進行するものです。椎間板は非常に弾力に富む組織ですが、これは中の髄核に多くの水分が含まれていることによります。生まれた直後の赤ちゃんの椎間板の髄核には90%の水分が含まれていますが、70歳位になると65%位に減少し、あたかも古くなったゴムホースのように椎間板本来の弾力を失います。このような椎間板や椎間関節の変性によって背骨の支持性が失われ、更に背骨に異常な運動が出現すると背骨を支えている背筋や腹筋に多大な負荷がかかり、腰痛が起こるという腰痛発生の一連のメカニズムが理解できると思います。おおむね加齢に伴って、椎間板や椎間関節が変性していくことにより起こる場合が多いのです。
加齢に伴う変性以外にも、腰痛の原因として炎症、腫瘍、外傷があります。脊椎が炎症を起こして腰痛になることもあります。交通事故にあったり、仕事中に高い所から転落したりして、腰部に急激に強い外力が加わって起こる腰椎の骨折や脱臼などにより、腰に痛みが生じます。
またそれ以外にも腰椎捻挫や腰部打撲などがあります。腰痛を引き起こす疾患として、内科的には急性膵炎、胃・十二指腸潰瘍、泌尿器疾患も関係することがあり、尿管結石や腎盂炎などがある時には腰痛を引き起すことがあります。婦人科では子宮内膜症があります。また時にはヒステリーなどの精神疾患でも腰痛をきたします。
5・腰痛の種類
椎間板ヘルニア→腰痛の原因となる病気のうち、最もよく知られているのが椎間板ヘルニアです。椎間板は椎骨と椎骨に挟まれた組織で、ちょうどクッションのような働きをしています。外側は線維輪という組織でできていますが、内側は髄核というゲル状の組織になっていて、椎間板ヘルニアはこの髄核が飛び出した状態をいいます。
無理な姿勢からくるストレスなどが原因となって、線維輪に亀裂ができその亀裂を通って中の髄核が膨隆したり、脱出したりします。しかもその方向は運の悪い事に構造的に弱い背部に向かう事が多く、そこを通っている神経根を圧迫して激しい痛みを引き起こします。主な症状は腰痛と坐骨神経痛ですが、この他にも足の知覚障害や筋力の低下、反射の異常などが起こります。
ギックリ腰(腰椎捻挫)→顔を洗おうと中腰になった時や、重い物を持ち上げようとした時など、何かの拍子に急に腰が痛くなる事があります。この様な突然に激しい痛みが襲い、動けなくなる症状をギックリ腰といいます。別名「魔女の一撃」ともいわれています。ギックリ腰は椎間にある小さな関節(椎間関節、別名ファセットという)の捻挫によって急激に引き起こされます。ギックリ腰を起こす人は多く、また激しい痛みを伴いますが、場合によっては圧迫骨折など他の病気であることも考えられます。
脊椎分離症→脊椎分離症は文字通り脊椎の一部が骨折して離れるというもので、椎間関節突起間部に見られます。あまり激しい痛みを伴わないことが多く、分離症と気付かないケースが良くあります。
その他分離を伴わないすべり症(脊椎すべり症、変性すべり症ともいう)もあります。
分離を伴わないすべり症は、椎間板が加齢や疲労などによって徐々に変性するのに伴い、椎間板内圧が減少することによって椎間関節が不適合を起こし、椎体が前後にすべる事に起因します。いずれも40歳代50歳代の中高年に多く見られます。
変形性脊椎症→腰椎に見られる変形性変化の代表は、椎体の角に棘やくちばし状の骨が出てくる骨棘(こっきょく)形成です。骨棘は経年的な変化によって発生しますが、まったく痛みがないケースもあります。また痛みといっても椎間板ヘルニアのように足のしびれなどはありません。大体朝起きあがった時や、夜トイレに立つ時など、動き始めた時に痛みが出るのが特徴です。動き出したら起き抜けほどには痛みません。
骨粗しょう症→骨粗しょう症は単位体積当たりの骨の絶対量が減少し、骨がもろくなった状態をいいます。ちょうどスポンジのようにスカスカになっている状態をイメージすれば分りやすいでしょう。骨の量は30歳代をピークにドンドン減っていきます。骨粗しょう症もまた加齢によって引き起こされ、とりわけ閉経期以降の女性は骨に必要な女性ホルモンが減るため、骨粗しょう症になりやすいといえます。
症状は疲れやすく、同じ姿勢を続けた後に腰背部に重くて鈍い痛みを感じます。骨がスカスカの状態ですから、布団の上げ下ろしなどわずかな力が加わっただけでも、椎体の圧迫骨折(クシャッと押しつぶされるように骨折すること)をきたします。圧迫骨折があると、むろん強い痛みが出ます。ご年配の人の中には腰がエビのように曲がってしまった人もいますが、これはわずかな力でも圧迫骨折を起こし、その数が重なって脊柱の後弯が起こることによります。もちろんこうなると身長も縮んでしまいます。また圧迫骨折は、腹筋や背筋が弱くなってしまい、背骨をまっすぐに支えきれなくなったこととも大いに関係があります。
6・ストレスも腰痛を招く
心の病のために腰痛が悪化したり、本来は軽い腰痛のはずが通常生活を続けることができないほど症状がひどくなることがあるのです。このような心の病には心身症や神経痛、うつ病などがあります。
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